写真x
 
写真00
この紋所が眼に入らぬか!
SMG マークじゃありませんよ、右サイドに輝くウエスタンアームズのマークです。
これこそ、私が金属製の中で最高だと思うモデルガンです。

写真01
箱まで実物そのままにコピーされています。
今では版権にうるさいWA さんですが当時は、それなりです。
 
今の若い人に「CMCのガバメントが良いっていうから触らしてもらったけれど、たいしたことねーじゃん」なんて言われて「 うるせーっ、むかしはそのレベルなんじゃっ 」と、くやしく言い返しても実際今のエアガンのレベルは、相当に高いです。何十年も前の製品が品質で勝つことは難しくて当たり前です。
しかし、このSBHは、実銃を限りなく目指す、こだわりの国本氏によって造られたまぎれも無い王者です。 いまの「わけーモン」にも胸を張って自慢できます。
写真02
どうです、この無意味に長い10インチ、ど迫力です。
 
この長さは、ターク氏が1977年にGun 誌でメタリックシルエット射撃を特集したからではないでしょうか?長距離で鉄板を撃ち落とす競技には、正確さとエネルギーが必要なためロングバレルになります。
写真12
SAA キャバルリーなんて目じゃない迫力です。
プラ製の軽い物ばかり持っている若者よ、この重さを握ってびびるんじゃねーぞ。
でも、実銃でこのまま撃ったらトリガーガードで手が血だらけになりそうです。
写真18
そこで通常は、このようなグリップをつけていることが多いようです。
写真は ひしめ さんから頂いたもので米国オークションでのイタリアからの購入品だそうです。
グリップは経済産業省へ書類を出せば海外から購入できますが面倒くさいです。

登場

写真03
1978年11月号のGun 誌です。数ヶ月前から予約の広告が出ていましたが、この号で 「ついに発売」とあります。
 
当時は、52年規制(1977年)のあとで、オートマチック型がほとんど販売禁止になってしまい、 モデルガン業界もたいへんな時代でした。

写真13
もともと初めてブラックホークをきちんとモデルガン化したのは、ウエスタンアームズでした。
その前は、MGC が造ったマテルコピーをCMC が真似して販売していたことはありましたが、とてもレベルの低い物でした。
米国帰りの国本氏が業界にデビューしたのは、真鍮製の357ブラックホークでした。
3本スクリューのブラックホークですが、高級Gun 志向へ一石を投じました。ちなみにWA 社発足当時の社長は六人部氏でした。その後、合わずにすぐに分かれたようです。そののちは、国本氏が社長です。  
国本氏はモデルガン組合に加入せずに sm マークも知らん振りでしたので、52年規制に向けて警察の良い標的になりました。
ですので、銃身分離型規制で泣いた世代は、本当は真鍮モデルを崇めたりしてはいけないのです。 規制へのかっこうの理由付けになったんですから。
でも、あこがれちゃいますね。
 
写真は、伝説の真鍮ブラックホークが発売されたのと同じ年1976年にデビューしたハドソンの357ブラックホークと、WA・SBH です。 ハドソンの物はひょっとしたらWA の真鍮が原型かもしれません。3本スクリューですし。
写真09
その真鍮製も規制でなくなってしまいましたが、規制後にぞくぞくと各社からブラックホークが 登場します。写真は上から
です。当時人気のあった漫画「ドーベルマン刑事」の影響なのかもしれません。
注目していただきたいのが、スクリューの数です。WA だけが2本スクリューです。 このモデルのみニュー・ブラックホークのモデル化なのです。 実物では、3本スクリューはたいへん珍しい物ですが、モデルガン界では逆な現象になっています。 ニューブラックホークは、安全機構を再現するのがたいへんだからSAA 式の3本スクリューのほうが 安く製作できます。

ニューモデルSBH

写真08
実銃のニューモデルブラックホークは、トランスファーバーシステムという安全機構が組み込まれています。
これをモデル化したものは、WA 社製だけです。この機構のみではなく、WA 製はすべて実物どうりのパーツで構成されています。国本氏のこだわりが見て取れます。
断面図
この機構です。
オールドタイプ・BHを持って馬から落ちた人が誤発射で大怪我をしたらしくて、 訴訟を受けたスタームルガー社は、この安全機構を全部装備するようにしたそうです。
写真10
実銃のニュースーパーブラックホークは、それまでと違いフレームが強化されたため大きくなっています。WA のモデルガンもそのようにフレームが大きいです。写真は、WA にハドソンのグリップを乗せています。右は、ハドソンにWA グリップを置いています。5mmほど大きいのがわかります。
写真17
この写真のグリップは、両方とも実銃用ですが、左がブラックホーク、右がスーパーブラックホーク用です。海外から購入の際には、3インチを超えるかどうかを聞かないといけません。
ちなみに実銃のブラックホークの呼び方は、以下のようになっています。
1955年 ブラックホーク
( 通称オールドタイプ)
口径30カービン
357mag、45colt
3本スクリュー
1959年 スーパーブラックホーク
( 通称オールドタイプ)
口径44mag
1973年 ニューモデルブラックホーク 口径30カービン
357mag、41mag、45colt
2本スクリュー
ニューモデルスーパーブラックホーク 44mag

 
ですからWA だけがニューモデル・スーパー・ブラックホークで他のモデルガンは オールドタイプなのです。 ちなみに実銃のレッドホークは1979年、スーパーレッドホークは1986年に登場です。両者ともに金属モデルガンでは存在しません。

外観

写真04
でっかいハンマースパーにワイドトリガー。44マグナムを腹いっぱい撃つんだという迫力が伝わってきます。
写真06
シリンダーには、44マグナム径の穴が開けられていますのでダミーカートも弾頭を抜けば すっぽり入るでしょう。インサートには、エジェクターロッドの逃げが設けられています。
写真07
ゲートを開けるとシリンダーはフリーになります。実銃もこうなっています。
実銃のブラックホークは、コルトSAA が生産中止のころに発売されてヒットしましたが、 コルトの特許などに抵触しない様にあれこれ機構が変えられています。
外観がSAA そっくりなのに中の構成は全然別物です(ニュータイプは)。

金型失敗?

写真11
WA 製のSBH は、すべてこのフレーム部分がサンダーで削られています。
メッキが削られていますね。これは、きっちりに造りすぎたために削らないとシリンダーが 回転しないためです。金型の失敗なのか実銃のような作動を求めた結果なのか判りませんが、 手間がかかることは間違いありません。
おかげでWA SBH は、素晴らしい動作です。しかし、ハンドが亜鉛のために折れやすいそうです。

刻印

写真15
左サイドに誇らしげにNEW MODEL SUPER BLACKHAWK の刻印があります。
この刻印の物がオークションで安く出されていたら狙いましょう。でもオヤジ連中は、2スクリューを見ただけで判っちゃいますね。

カタログ

カタログ写真2

↑クリックで拡大します。
カタログ写真1
古いウエスタンアームズのカタログに詳しい広告がありましたので掲載しておきます。 カタログの日付は1979年12月となっています。
 
発売後1年くらいが経過しています。
木製グリップにケース付きのデラックスタイプが登場しています。


カート

写真16
カートは、まだキャップ火薬の無かった時代です。紙火薬用です。
WA の SBH 発売と同じころにマルシンからキャップ火薬が登場しています。

純正木グリ

写真19
ウエスタンアームズ純正と思われる木グリです。あんがいチープな感じです。

おわりに

写真14
SAA とほとんど同じ格好ながら、近代的安全装置を装備して強化されたブラックホークは スタームルガー社のヒット商品となり、やがてより強力なレッドホークまで登場します。
22口径のマーク1拳銃を売っていたルガー社の飛躍のきっかけになりました。
 
モデルガンのSBH は、その素晴らしさをユーザーに焼付けましたが、世はプラスチック時代に突入し、やや価格が高めだったWA は静かに消えていきました。
ウエスタンアームズからは、二度と金属モデルガンは発表されませんでした。WA 製の唯一無二の量産金属モデルガンとなりました。ネットの情報によりますと火事で金型が消失したらしくて 再販も絶望的です。状態の良い物をもっている方は是非大事にしていって欲しいです。
 
なんたって金属オヤジ世代の誇りの逸品なんですから。

おまけ

分解図