写真00
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金属モデルガンで、というか旧日本軍の拳銃で唯一可動モデルガン化されている、南部14年式です。 N-1 と呼ばれる最初のモデルです(ベビー南部は民間拳銃)。

本当は、14年式拳銃が正式名らしいのですが、もっぱら南部をつけて呼ばれています。
もともと南部式拳銃の改良型なので、設計者をたたえているのでしょう。南部氏は軍人として、かなり偉かったようです。


写真11
大変スマートな拳銃ですが、かなり大きいです。
分解して思いましたが、機構はキャシャです。こんなので大丈夫ですか?と、思っちゃいました。

写真01
特徴あるダルマ型のトリガーガードは、後期の物で、ハドソンはその形をモデルアップしています。 別パーツで前期型のトリガーガードも販売されていたようです。

写真02
その後、ハドソンは23年後にN-2、30年後にN-3 と合計3回もモデルアップします。チカラ入っています。 なんたって唯一の日本軍モデルですもんね。

比較に置いているのは、N-3 です。少し大きくなっています。後述するようにフレームが変更されているせいかもしれません。 1979年1月号にTurk 氏が本物と比較していますが、N-1 は、
1〜 2mmほどの違いしかないようです。
マガジンは、実物より少し大きいそうです(Gun 誌1983年11月号)。


写真03
古いホンリューのチラシのコピーですが、次期製作はワルサーPP とありますね。
でもホンリュー、ハドソンからではなくて マルゴーから発売されました。

登場

写真04
1967年(昭和42年)2月号のGun 誌に登場します。発売はホンリューです。
その後、ホンリューは無くなってハドソンが引き継ぎます。ハドソンとホンリューは、会社の住所がほとんど同じなので、 もしかしたら親族で経営していたのでしょうか?

中田の文鎮南部

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実は、14年式のモデルガンは、ハドソンの前に中田−コクサイで発売されていたようです。1963年5月号(昭和38年)の広告です。 マガジンは抜けますが、ボルトは動きません。中の記事に六人部氏は火薬の音が嫌いなのでダミー式になり、 中田氏が改造できないようにということで、ボルト無しになったことが書いてあります。興味深いですね。
写真20
数年前にオークションに出ていた文鎮南部です。
フレーム後方が貧弱です。大きさも少し小さかったようです。

メカニズム

写真06
Gun 誌ではTurk 氏にボロカスに書かれていますが、どうして、立派な物です。実弾を撃つ人から見たらありえないでしょうが、 まったく14年式の構造を知らなかった私には、大変よい教材です。
写真07
下側にN-2 を置いていますが、矢印のように本物にあるロッキングブロックがN-1 には存在しません。 エジェクターは、ネジ止めですが、実銃ではカシメられていますので本物の分解図には登場しません。

N-2 ではストライカーの溝が短くなっていますね。本物の14年式も後期はそうなりました。 実銃の南部ホルスターには予備のストライカー入れがありますので本物でもよく壊れたのでしょう。
モデルガンは、材質がもろいので実銃の構造欠陥がもろに出ます。ワルサーP-38 のシアなんか典型的です。 14年式ではストライカーなのでしょう。


写真08
左はN-2 ですが、フレームが2パーツ構成に変えられていることが判ります。実銃は右のN-1 のように 1ピースで構成されています。N-2 でリアルな動作を求めた結果、1ピースフレームでは難しかったということでしょう。
再現しにくかった・・と、いうことは実銃のフレーム加工は、かなり面倒だったことが想像できます。 実銃へと思考が繋がるのがモデルガンの良いところです。エアガンでは得られない楽しみです。
写真09
実銃ではマガジンキャッチを押し込んでトリガーガードを外しますが、ハドソンではピンで止まっているので ピンも外す必要があります。工作精度の関係からか、ここはN-1、2、3ともにこうなっています。

六人部氏の原型では、ピンは無かったのですが製品化したらトリガーガードが下がってくることが確認されたので ピンを追加したようです(Gun 誌1978年11月号・ジャック天野)。


写真10
悪名高きマガジン押さえ部分です。下のモデルはN-3 ですが、実銃と同じように作られています。とうぜんマガジンにも 切り欠きが入っています。N-1 は亜鉛一体式なので見かけだけです。

マガジンが落ちないようにするなんてのは、ちょっと軍用として・・・、いえ、拳銃として恥ずかしい部分です。
前述の1983年のGun 誌では、マガジン工作精度にバラつきが、かなりあるとの記載がありますので、そのせいかもしれません。 女学生たちなんかがハチマキ巻いて作っていたのかもしれませんね。なんだか哀しいパーツです。


マガジン

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左からN-1、2、3 のマガジンです。
ごらんのようにN-1 だけは、実銃のマガジンにある装填ラッチが省略されています。
一番右のN-3 のマガジンに脱落防止の切込みが見られます。

Gun 誌1978年11月号・ジャック天野さんの記事によると、ごく初期にはラッチ付きのマガジンだったようです。ですから 分解図にもラッチが載っています。また、原型段階ではマガジンセフティも存在したようですが、製品化で省略されています。 そちらは、のちに別売りで復活したようです。当ページの分解図に載っています。


写真16
昭和42年5月の刻印があるハドソン・14年式のマガジンの写真を頂きました。kingdam9-9 さん、有難うございます。

ごく初期のマガジンにはラッチもボルトストップもあったんですね。貴重な写真を有難うございます。 また、このモデルには、マガジンセフティも組み込まれているとのことです。 発売当初は、ほぼ完璧構造だったのにあまり売れなかったのか、やがて省力化されちゃいました。


初期の箱

紙箱写真
chukichi-hide さんの所から初期の紙箱写真をいただいてきました。
昔のモデルガンは、たいていこんな感じで高級品扱いでした。

カート

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smGのN−1モデルガンに付属しているカートは凹が深いです。前撃針もデトネータのような格好なので、ブローバックモデルかもしれません。 他にボトルネックタイプのカートも見たことがあります。
カートの左端は実物8mm南部のダミーカートです。
写真12
左からN-1、N-2、N-3 です。N-1 は、見た感じ少し小さいことが判ります。
中身が大幅に省略されているモデルガンですが、日本軍の拳銃をモデル化した、たいへん貴重な存在だったと思います。
写真14

追記・オールドBOX

写真19 ブログ 悪戦苦闘絵日記II の kingdam9-9 さんから初期の箱写真を頂きました。
写真許可くださった箱のオーナー様、有難うございます。
昔の箱って言うのは、チカラ入っていますねぇ、しかもものすごく良いコンディションのようです。
英語表記がHUDSONではなくってHADSONとAですね。
写真17

写真18
きんきらの箱に入っているのは、9mm弾のようなカートと
これは珍しい、メッキされたマガジンです。初期のころに存在したのでしょうか。このマガジン・フォロアーにはボルトストップ用の突起があります。製品登場のころの省略されていないN−1の本当の姿がわかる貴重な資料を見せていただき有難うございました。


初期のエキストラクタ

写真21

大変珍しい初期のモデルのロストワックス製法のエキストラクターの写真をいただきました。
 
右下のように普通のスチール製とは全然違う、かなりごっつい作りです。
南部も初めのころは、かなり熱の入ったモデルだったんですね。


おまけ

分解図のJPG が別窓で開きます。→  分解図へリンク