写真0

マニアのあいだでは、ホンリューモーゼルと呼ばれるハドソンの旧型モーゼルです。
どうしてホンリューと呼ばれるのか知りませんでしたが、この記事の下方で述べています。

しかし私は、このモデルガンの存在は知っていました。調べてみるとかなり長いあいだ 販売されていたことが判りました。
まだ創成期のころに開発された物でモデルガン自体はチャチな構造ですが、モーゼルミリタリーの特徴をよく捕らえた造形だと思います。


写真01

頭でっかちで腰が引けたデザインは、特徴をよく捕らえています。
また、実銃のラージリングハンマーを模したのではないかと思われる でっかいハンマーが魅力です。デザイン的にも後方をグッと引き締めています。

モデルガンの下の書籍の写真が、実銃のラージリングハンマー・モデルです。


写真02

弾倉下方の盛り上がりをきちんとコピーしています。
しかしクリップ装弾ではなくマガジン式です。プレート式のマガジンキャッチが見えます。


写真03

フレームと銃身部分は、ネジで結合されています。当然ショートリコイルは無しです。
ネジの先にガス抜き用の穴が見られます。46年規制前の製品には無いはずです。

漫画ワイルドセブンの著者、望月先生がこのネジをきちんと描いていたのを覚えています。
メンバーの「世界」さんが使用していました。


写真04

かなり壊れやすいリアサイトです。どうせなら左右貫通のピンで留めたほうがよかったでしょう。このモデルの泣き所です。


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ボデーに打ち込まれた3本のピンが見えます。また、ボルトハンドル部分にも ネジが見受けられ製作の苦難を物語っているようです。 かつてモデルガンは、外観だけが似ていれば売れた時代を物語っています。

刻印は、こちら側のMAUSERのみで会社名も見当たりません。
また、浮き出し刻印で金型を彫る方式です。このほうが安価にできます。


写真06

ボルトは実物のように四角ではなく丸い断面です。
乏しい資料から一生懸命作ったのではないでしょうか?

このモーゼルは、細かく見れば実銃に似てはいませんが、雰囲気が よく醸し出されています。きっと設計者の愛が入っていたのではないでしょうか?
(設計者の気持ちは製品に如実に反映されるものです。)


ホンリューさん

写真07

この広告はGun誌 1968年(昭和43年)6月号の物です。

のちにコクサイとなるインターナショナルガンショップ(INT)の広告ページです。

ブローニングの上に丸郷商店とホンリューコーポレーションの名があります。
まだ、ハドソンとは名乗っていなかったのでしょう。(ホンリューは別の会社でした)


ハドソン登場

写真08

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こちらは、翌年の1969年(昭和44年)5月号の物です。ハドソン登場です。
広告にあるようにモーゼル拳銃は、第2次大戦時に中国軍に多数使用され、日本にとっては、なじみが深かったと思います。

この頃の私は、ウルトラマン(初代)とアポロに夢中で、モデルガンなど見たこともありませんでした。 ホンリューなどを知っている方は、このころ中学生以上だったと思います。 団塊の世代と呼ばれる方々でしょう。

日本の高度経済成長を支えてきた企業戦士たちです。


写真09

この、いわゆるホンリューモーゼルは、その後ハドソンから発売されたモーゼル1930 と 併売されていました。調べてみると結構長い間売られています。

この写真は、1978年(昭和53年)10月号のGUN 誌 のものです。7,500円のほうが新型でホンリューは5,000円で 販売されています。よほど部品を多く作ったのか、在庫が有り余っていたのか?
通常では、新型が出たら旧型は販売しない物ですが、この年まで二つの大きなモデルガン規制を乗り越えて生きながらえています。 翌年のGun 誌 から消えています。


併売広告

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1975年10月号のGun誌 公告です。ホンリューモーゼルと1930モーゼルが併売されています。

あとから理解できたのですが、このページを書いているときにはハドソン=ホンリュー と思っていましたが 全く別の会社だったようです。ホンリューは、会社がダメになったようで、モーゼルの製造販売はハドソンが引き継ぎました。 と、言うことはホンリューの製造は元々ハドソンが行っていたのかもしれません。ホンリューがダメになって債権回収で 金型を引き取ったのかもですね。


ハドソンと比較

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下側が新型のハドソン モーゼル 1930です。ほぼ実銃どうりに作られています。
なんだかスマートで、モーゼル独特の泥臭さがありません。


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左からMGC 、ハドソン1930 、ホンリューです。
ホンリューは、ひとまわり小さいです。
ハドソン1930 は、MGC よりすこし厚い感じですね。


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左からMGC 、1930、ホンリュー。
実銃コピー度は、左の二つに負けますが、モデルガン史においては長寿の物でしょう。
ふたつの大規制を経験し、新型にも負けずに生き延びた歴戦の勇士の面構えだと思います。その存在感は、けっして引けをとりません。完成度ではなく、時を愛でる製品だと思います。まさにアンティークでしょう。

団塊の世代が定年を迎える今、このホンリューのように先人として胸を張った存在感のある先輩として 生活していただきたいものです。


追 記

その後、メールで情報いただきました。
昭和40年ごろの発売で、初めは国際ガンクラブという国際出版のモデルガン部門からの 発売で5,000円という高価な物だったそうです。
( 国際ガンクラブは、その後INT となり国際産業へと 変わっていきます。)

ホンリューモーゼルは、その数年のち中田からの販売に変わり値段もナカタの軍用シリーズと同じ 3,800円に変更されました。ナカタの箱に入っていたそうです。

当初のホンリューは、ダミーカート仕様で火薬はボルト後端に入れハンマーで叩いて発火させていたそうです。 中田での販売になってからカート前方での発火になったようです。 デビューから中田時代まで木製グリップが標準だったそうです。その後ハドソンからの販売になりプラに変更されました。


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ボルト後端の変な形は、火薬を入れていた名残かもしれません。


参考資料・追加


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かなり古いGun 雑誌を買いました。国際出版の月刊Gun がまだ発売になっていない頃に 短いあいだ存在していたガンファンです。1962年(昭和37年)9月号です。

この中の広告に現在でいうコクサイのページに ホンリュウモーゼルらしき物があります。まだ、MGC のワルサーVP2 が掲載されていませんので ひょっとしたら、国産オリジナル・モデルガン第一号は、MGC ではなくてホンリューモーゼルかもしれませんね。

この当時、CMC はマテルのコピー品SAA を販売していてMGC は、ヒューブレーのガバメントを 改造して販売していたようです。


追記・オールドBOX

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これは、珍しいですねぇ、初めて見ました。初期のころの紙箱の写真を頂きました。

ブログ 悪戦苦闘絵日記II のkingdam9-9 さん、箱のオーナー様、有難うございます。

むかしのモデルガンの箱は、たいてい毛羽立っていました。当時は高級品だったのです。
素晴らしい箱ですね。ちなみに箱の下半分は白ボール紙で、すっかりボロボロなのだそうです。

中には、かつてハドソン刻印のホンリュー型が入っていて、それには初期に標準装備されていた丁寧な木グリが装着されていました。 日本初のモデルガンにふさわしい重厚な箱ですね。すごい箱を見られて幸せです。有難うございました。


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ちなみにこれが、sm シールの貼られた、後期に販売されていた物の箱です。


*** ストック2種 **

右は、Gun誌の1963年(昭和38年)7月号の
本流株式会社の広告です。
教えていただき有難うございました。

1)プロトタイプ

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モーゼル拳銃と言えば、やはりストックですね。
ホンリューモーゼルにも取付けるべく試行錯誤が行われたようです。 これらの写真のストックは、プロトタイプで実際には発売されなかったそうです。 やはり、取付け部分が難しかったのでは無いでしょうか?

写真にあるフレームは、古い物でストック取付け部が全くありません。 後期には、増設されています。当初は、このような形での発売だったそうです。


2)サードパーティー製品

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こちらのストックは、京都の「やまもと」で販売された物です。 ホンリューモーゼル発売と同時だったそうです。ストックのフタはオリジナルでは もっと薄い物だったそうです、格好悪いので厚い物にやり替え、色も塗り替えたそうです。

グリップフレームの凸に合わせてネジで固定する方法です。
何度も脱着を 繰り返した為、連結部は傷だらけだそうです。


2個のホルスターストックですが、なんとかしてモーゼルにストックを 取付けたいという思いがにじみ出ています。どちらも苦心して製作されたのでしょう。 最近のトイガンクォリティからいうと隔世の感がありますが、それもみな先達の方々の努力のおかげだなぁと思わせる品々でした。
 

オーナー様方、貴重な写真を頂き、歴史の一ページを紹介させていただきました。 有難うございました。

おまけ

分解図