まぼろし・ハドソン・S&W 41

亜鉛合金製・金属モデルガン
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中年オヤジの鼻血ブーが止まらない、まぼろしのハドソン・S&W 41です。
若い人は、全く知らないでしょう、とにかく写真すら見かけないほど、数が少ないのです。

スライド上には、1976年を示す76と刻印があります。そう、昭和 51年ですね、悪名馳せる52年規制 の前の年です。


外 観

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すでにMGC からS&W 44オートが発売されていましたので、ハドソンの物はそれを参考に 作られていると思います。

写真のモデルのスライドストップとセフティは、マルシンプラ製M 39 の物です。
オリジナルパーツは、レストアの時に、触ったと同時に崩壊したそうです。

なぜか、ハドソンの物は、S&W 41という名前になっていますが、故意に変えたものだと思います。
MGC の半値で供給するので「同名じゃ営業妨害か?」と思ったのかもしれません。

実銃のS&W 44オートは、その後の量産品であるダブルアクションのM 39 のプロトタイプのようなもので、 世界に数丁しかない物です。


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右側をみると判るように sm 規制後の製品なのでガス抜き用にチャンバーにスリットが 入っています。エキストラクターは、ライブですが、実物の44オート・エキストラクタをかたどったモールドの上に 設置されていますので、ちょっと格好悪いです。


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S&W のオートマチックは、曲線が多いのでガバメントに比べ女性的な 美しさを感じます。


規制直前の登場

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写真のように当初の試作品には、モデル44と刻印がありますので、発売に際し41オートと呼んだのには、故意の何かがあったのでしょう。

古いGun 誌によると1976年6月発売を目指していたようですが、実際には8月以降だったと思われます。このあと、1977年6月に銃刀法が改正されまして、詳細については総理府令で通達するということで、1977年10月ごろまで、どのような規制になるのかまったくわからない状態でした。蓋を開けたら銃身分離型の発売禁止で、しかも 法律制定後6ヶ月後からの施行なので、12月1日から販売もできなくなるということで、業界は、急きょ、投げ売り状態に陥ります。

このころは、金属モデルガンの繁栄が頂点の頃で、同年発売のMGC P-38 MJQ やCMC ガバ 3型、なども1年くらいしか 発売期間がありませんでした。P-38 やガバメントに比べ、このS&W 41というマイナーで、しかも大きさが、小さいGun の売れ行きは、悪かったと思われます。そのことで、現在では、めったに見かけることがない「まぼろし」となっています。


MGC と比較

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ハドソンの物は、すこし小さいと聞いてはいましたが、こんなに小さいとは思いませんでした。
ジュニアガンのようなサイズです。当時規制を知って、お金を握りしめ、お店に行き、何か一つだけ買うとしたらハドソン41オートは、買わなかったかもしれません。


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機構的にもずいぶん省略されていて、大きさも小さいということは、このモデルは、 MGC のS&W 44オートを、欲しくても買えない子どもに向けて安価に作った製品だったのではないでしょうか。

MGC 44オートは、ブローバック式で主要パーツも強化されていた高級品でした。
当時MGC 44の定価1万円は、子どもにとって、はるか高みの金額でした。


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大きさが違いますが、かたち的にはよく似ています。
ハドソンのほうのバレルは、折れているものを接着剤でくっつけていますので、当初よりもすこし長くなっていると思われます。


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全体にすこし小さいので、厚さは、かなり違います。


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親子といった印象です。当時のGun 誌広告のとおり全長172mmです。MGC は、190mm くらいあります。 MGC と並べると、そのジュニアモデルって感じがします。


メ カ

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ショートリコイルはしません。バレル固定式です。 部品数も少なく作られており、製品を安く仕上げる工夫を感じます。
ついでに亜鉛材料も安物を使ったのか、この個体は見た目は丈夫そうですが、触れば崩れる状態で、これ以上バラ すと崩れてしまいます。バレルも折れています。


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トリガーには、軸より上の部分にバレルの下部についているスプリングによって、テンションがかけられています。
その力は、トリガーバーを介してシアにまで及んでいますので、シアスプリングというものはありません。 トリガー、トリガーバー、シアまでが、完全に一体で動きますので、ディスコネクト動作はありません。 コクサイのP-38 みたいです。この動きをたった一つのバネで賄っていて、しかも単純部品を使用していますので、 製品単価を下げるのに貢献しています。


おわりに

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1976年ごろは、モデルガン黄金時代で、名品が輩出しました。また、真鍮モデルや長物の鉄製モデルも販売されて 、業界やユーザーは趣味の世界を謳歌していました。この喜びがいつまでも続くのかと思っていました。 私は、オトナになったら六研の真鍮ウッズマンも買えるのだと思っていました。 「好事魔多し」とは、よく言ったもので、この後とんでもない規制に突き落とされてしまいます。 ハドソン41オートの誕生は、「その時」まで、あと14ヶ月くらいしかなかったのでした。

このモデルがどのような意図でモデル化され、またどうして41オートに名前が変えられたのか分かりませんが 、なんとも不思議でレアなモデルです。未曽有の惨劇「52年規制」を語る物言わぬ証言者です。

おそらく自分は手にすることはないだろうと思っていた「まぼろし」を 触ることが出来て、感慨ひとしおでした。


オーナー様、貴重なモデルを貸していただき有難うございました。

おまけ

分解図のJPG が別窓で開きます。→  分解図へリンク


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