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警官の夢
コンバットマグナム

実銃のコンバットマグナムは、著名なシューター、ビル・ジョーダン(Bill Jordan )の進言により 完成され、「これぞ警官の夢の実現だ 」と謳われました。
 
それまでの357マグナム弾を撃てる銃といえば、Nフレームの重いハイウエイパトロールマンだけだったので、 「小さく、軽く、強い 」の3拍子を揃えたKフレームは、理想的だったのでしょう。
 
現在では、さらに強力になった357弾 にフレームのバレル後端が耐えられずに壊れるので、 Nフレームの大きさのLフレームに変更されています。(Gun 誌1989年7月号Jack 氏の記事より)
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実銃は、警察用に4インチが製造され後年、6インチ、2.5インチが販売されました。 民間でも4インチは好評なスタートを切ったようです。コクサイのモデルガンも 同様に3種類の銃身があります。
 
もともと警官用に作られた銃だからか、2.5インチは刑事が背広に隠し持つように ラウンドタイプのグリップになっています。こんなので357マグナム撃ったらものすごい反動でしょうね。

コクサイ登場

写真02 1984年12月号のGun 誌です。この広告だけ見るとモデルガン時代のように見えますが、 すでにエアガン隆盛の時代です。マルイ、マルゼン、JAC、ファルコン、LS、グンゼ、マツシロなどなど多くの 会社から安価なエアガンが発売されていた時代です。この時代に金属モデルガンを出したコクサイの勇気を称えたいです。 たぶん商売的には、さっぱりではなかったかと思います。当時の社長の荒井新一郎さんは、モデルガン創成期から 活躍された方ですので、金属モデルガンには拘りがあったのかもしれません。

新旧比較

写真03 この新型モデルガン発売以前のコクサイ357マグナムは、右の写真のように何だか個性的な形をしていました。 この旧型金属マグナムは、不思議なことに犬猿の仲だったはずのMGC でも販売されていました。 MGC と仲直りしたのか、 どうだかよく知りません。
 
私にとっては、この新型コクサイM19 を手にした瞬間から、「ボロのコクサイ」が「リボルバーの雄コクサイ」へ と完全に変化しました。

メカニズム

写真04 メカは、完全に 本物のS&W をコピーできています。したがってボルト(シリンダーストップ)の 上がり具合も個体によって微妙に違います。シビアな調整が求められる場所です。
SMG マークが大きく入った古い物と22金メッキの新しい製品を開けてみましたが、このあとの製品であるM29 に見られる、 ガタの調節のためのブッシュは見られません。M19 の方が設計、製造の出来が良いのでしょう。
 
コクサイ金属M19 登場の2年前には、プラ製で同様メカのコクサイM19製品が発売されていたのですが、それは リコイルシールドがサイドプレートに付いた物で、「もう少し」でした。CMC のM19 に負けていました。そのリベンジか 金属製品では完璧を目指したようです。このころ、荒井社長は永田市郎氏に感化され、「カンペキ」を目指したのでは ないかと思われます。
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ここのピンにC巻きピンを使用しているのが、実物と違いますが、よくぞここまでというレベルで コピーできています。今までの日本の金属モデルガン水準を超えました。

実物グリップ

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今でこそ、トイガンに実物グリップが装着できる事は、驚きではありませんが、昔のモデルガンは、 故意でもあり実物グリップは装着できませんでしたが、このコクサイM19 シリーズは、ポン付けで実物グリップが 装着できます。設計の綿密さに敬服します。
 
写真は両方ともS&W 社の実物グリップですが、上の方が旧型で厚さも薄く、くすり指の彫りもネジまで届いていません。下の物 は、グリップ自体が厚く、小指部分がかなり出っ張っていて 指の形の彫りも深いです。衝撃にはこちらのほうが良いでしょうが、普段は上の物の方が、かさばりません。

Nフレと比較

写真07 写真は上がコクサイM29 でNフレームの44マグナムの大型銃です。こういう角度で写真を撮ると NとKの大きさの違いが判り辛いです。
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しかしこうやって見るとかなりフレームの大きさが違う事が判ります。持つとさらに違いが判ります。 Nフレームはでっかいです。この重たい拳銃を毎日腰にぶら下げていた警官の負担を思い、ジョーダン氏の「Kフレで 357 」という提案も頷けます。

名経営者・Carl Hellstrom

このころのS&W 社の社長は異色のスウェーデン出身のヘルストレーム氏で、初代のウェッソン氏の孫にあたる4代目 ハロルド・ウェッソン社長の顧問から、1946年同社長の急死により初めてウェッソン家血族以外の社長として君臨しました。
 
この方は、造船技士系だったそうですがビジネスを見る目があったようで、不況に苦しむS&W を建て直し名品を 輩出しています。K22、32、38マスターピース、コンバットマグナム、チーフスペシャル、 センテニアル、M29、オートのM39 など、こんにちのお馴染みのS&W 代表作は全てヘルストレーム氏の社長時代に 出現した物です。このコンバットマグナムもジョーダン氏に警察向けの理想の拳銃の 姿を相談したところから誕生しています。M29 誕生と似た話です。Gun の専門家で無いからこそ、 人の意見を素直に聞けたのかも知れません。
 
初代ウェッソン氏による事業の創設とその血族以外の継承による事業発展は、現代でも良いお手本の物語だと思います。 同氏は1963年心筋梗塞で亡くなります。68歳でした。
 
ネット検索するには、「Carl Hellstrom s&w 」で少数ヒットします。

栄光のコクサイ
Kフレ・シリーズ

写真09 実銃のKフレームが大ヒットしたように、コクサイのKシリーズもこのあと種類を増やして実銃とは逆に 古いミリタリポリスへとさかのぼり、素晴らしい作品を多く輩出します。 コクサイ産業は荒井社長の逝去により無くなってしまったようですが、現在でもコクサイのブランドで 作られているようです。
 
その昔、MGC の下請けの十条金型とおこしたMGC 盗作事件の主役であった荒井氏の 「真似のコクサイ」は、この金属シリーズで完全に姿を消し、真の「リボルバーのコクサイ」と 呼ばれるにふさわしい会社として金属モデルガンの歴史に名を刻んだと思います。
MGC 機関紙ビジェールVol.3 から「十条事件」と「荒井氏への質問状」を参考にしました。

写真10

おまけ

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