2.5インチ写真

6インチ写真


ダーティハリーの置き土産

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コクサイの357マグナムです。今ではモデル19の名前で呼ばれていますが、当時はS&W リボルバーをモデル名で呼ぶ習慣はありませんでした。ミリタリーアンドポリスやコンバットマグナム、チーフスペシャルなど実銃のモデル名がつけられる前からあった製品名で呼ばれていました。
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S&W リボルバーをぶっ放す映画「ダーティハリー」が日本で公開されたのは1972年(昭和47年)のことでした。
その当時のモデルガン界でリボルバーといえば、SAAか、チーフくらいで大型リボルバーは、MGC が1969年から売っていた コンバットマグナム(モデル19)だけでした。そこへ、映画ダーティハリーの公開となり、口径は違えど形の似ているMGC のモデルは売れに売れたそうです。
ハリーの使った44マグナム拳銃のモデルガンは存在しておらず、似たようなS&W の大型DAリボルバーはMGCしか無かったのです。
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ダーティハリーの影響は、すさまじく、やがてモデルガン各社は44マグを開発、販売し始めます。
金属モデルだけで以下のようになりますが、他にプラスチック製品が多数販売され、52年規制と相まって金属モデルガンが 消えていく時代を迎えました。
 
1969年MGCコンバットマグナム発売
1972年  映画ダーティハリー、日本公開
1975年コクサイ357 、44 マグナム同時発売
1976年マルシン357マグナム発売
1976年CMCM27、M29 同時発売
1977年マルシン44マグナム発表するも52年規制で発売されず

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コクサイからは357 と44 マグナムが同時に発売されました。メカは同じ設計ですが、外観は357 はMGC コンバットマグナムを参考にしたのではないでしょうか?44 マグの方は、1974年に発売されたMGC のプラスチック製品の丸写しのようです。
 
このころのコクサイは、売れそうなものなら真似でも何でも、とにかく作って売ってしまえ、という感じでポリシーもオリジナリティも感じられない会社でした。 (のちに変わっていきますが・・・)

時は流れ

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のちに変貌を遂げた真の「リボルバーのコクサイ」から1984年に発売された最高傑作モデル19と並べています。
 
一見して解るように、当初発売された357マグナムは、2.5インチもスクエアバットのフレームでした。 当初からラウンドバットで発売したMGC とは企業姿勢に開きがあります。
2.5インチの実銃にもスクエアバットのフレームは、書籍から見ると存在していたようですが、インターネットでは写真を見つけられませんでした。
コクサイは単にフレーム金型を変更するのがいやで、各銃身長モデルは全部同じスクエアバットにしたものだと思います。
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後年のモデル19に比べると、シュラウド形状やフロントサイト、トリガーガードなど、どこも敵いませんが、私はなぜかこの2.5インチは 形状が好きなのです。おそらく銃身先端からシュラウドが生えているところがバランスよく見えるのだと思います。
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シリンダーには貫通シャフトのロックは何も存在しないので、机にモデルガンを置くとシリンダーが少しせり出します。 シュラウド先端からスプリングでエキストラクターシャフトを押さえているだけです。

登場

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1975年(昭和50年)のGun誌 11月号に広告が載っています。357 と44 マグナムが同時発売です。
すでにプラ製マグナムを発売していたMGC に加え、マルゴーもプラ製を販売します。
銃口の抜けていない金属モデルよりも火薬を使いたい子供たちにとっては、軽いプラスチックモデルの方が人気があったのでしょう。 MGC も大幅にプラスチック路線へとかじを切りました。

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この広告は、おそらく1976年頃だと思うのですがMGC の広告です。載っているのはコクサイの製品です。
どうも、このころMGC は、金属製品に見切りをつけ、すでに製造はしていなかったようです。会社の持てる資源は プラスチック・リボルバーへと注がれていました。それでもカタログには、金属製モデルガンが載っていましたので 自社製品の在庫が切れた物は、コクサイ製品を売っていたようです。また、数年後にはSAA、デリンジャーも金属製がなくなったために マルシン製品を売っていました。
 
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コクサイ・メカの変遷

1975年・MGC を参考

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同時発売された357と44マグナムは、全く同じメカで作られています。
うまく作動し、トイガンとしては完結されていると思います。
基本的発想は、1965年のMGC センテニアルで採用されたトリガー上部の厚さを半分削ってシリンダーストップを そこに配置する方法が取られています。

1979年・実物メカに接近

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これは、だいじそさんから頂いた1979年発売のコクサイ・マスターピースのメカ写真ですが、357マグナムに比べると、かなり変更されて 実銃に近くなっています。シリンダーストップが薄く造形されたので実銃と同じ機構が再現されています。
また、ハンマーブロックが初めて取り入れられています。

1984年・実物メカ完璧再現

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すでにプラスチックモデルで出来上がっていた、実銃構造を金属モデルにも再現しています。
色が金色でなかったら実銃メカと間違いそうなくらいに完璧に出来上がっています。これぞ「リボルバーのコクサイ」と歴史に 名を残す製品だと思います。
 
しかし、皮肉なもので「マネのコクサイ」から「オリジナルのコクサイ」に変貌を遂げたものの、BB弾発射と火薬を使用する スーパーウエポンは、受けなかったようで、やがて創業者の荒井氏の逝去により会社が無くなったのは残念なことです。 世の中は、たいてい人から好かれると貧乏であり、憎まれるようなことを平気で出来る人は金持ちである傾向がみられます。
名誉と富を同時に得ることは、たいそうに難しい相反することなのでしょう。

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コクサイの会社は無くなったようですが、ブランド名と製品は2010年の現在でも販売されています。 金型が壊れるまで、「良い製品は時を越える」を実践して欲しいものです。

おわりに

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スクエアバットの357マグナムを紹介しましたが、この変なモデルにはコクサイが生まれ変わっていく姿とダーティハリーを真似る 子供たちがMGC のプラスチックモデルガンを振りかざす姿が見て取れます。
時は流れ、BB弾を発射しないモデルガンは、見向きもされない世の中になりましたが、現在でもコクサイのブランドでモデル19が 輝く金メッキで販売されています。
並べて見るとちょっと格好の悪い357マグナムですが、ダーティハリー、52年規制、プラ製リボルバーと、あの頃の時代をくっきりと 思い出させてくれるモデルガンでした。

おまけ

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