マルゴー・PP

亜鉛合金製・金属モデルガン
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マルゴーのPP です。マルゴーは製造はやめましたが、今でもトイガン販売は続けています。

マルゴーさんは2016年、突然廃業しています。

PPK は各社からモデルガンが発売されていますが、PP としては、このマルゴーPP が、日本で唯一の金属モデルガンです。
また、なかなか見かけることが少ないモデルガンです。


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なんという美しい姿でしょう。フリッツ・ワルサー氏の集大成です。
実銃では、ダブルアクションを自動拳銃の世界に持ち込んだ名銃中の名銃ですが 日本では、PPK の方が有名で、あまりPP は話題に上がりません。


Gun 誌 広告

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古いGun 誌 を見ますと1969年(昭和44年)7月号に宣伝が出ていました。
この当時のマルゴーは、ディテクティブも製品化して張り切っています。

マルゴーの製品は、設計は良いのですが製造の方がいまいちで、まともに動かすのが大変です。


古い広告

広告写真19

2020/7/17 追記

匿名様より上記よりも古い広告をいただきました。

貴重な資料を有難うございます。

月刊青年漫画誌の1967年(昭和42年)11月号の裏表紙の広告だそうです。 立派な木製グリップが付いています。セフティ形状などが少し生産型とは 違っているようで、六人部氏の鉄製原型でしょうね。

近日発売となっていますから、このころに登場したのでしょう。

同時掲載のPPK は、戦前カットのスライドに戦後タイプのリアサイトなので ホンリューの製品ではないでしょうか? また、ブローニングは裏焼き写真になっています。


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パッケージには、ターゲットサイトの付いたPP が描かれセンスいいですね。
そのように2個並べてみました。おぉっ!レアなPP がふたつも??


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なんの、4個もお借りしてきました。まぼろしのPP もこんなにあると、レアではないように思えてしまいます。 4つともオーナーが違いますが、きれいにレストアされています。

皆さん 「これを持っているのは俺くらいのモンだろう」 と思っていたようです。


外観の特徴

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外観でもっとも特徴があるのは、トリガーガードの下側が直線であることです。
写真のように実物のワルサーのトリガーガードは、曲線で構成されています。

写真のように、マガジンキャッチが下についているのは、実物でも存在します。


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おにぎり型の銃口部分はきちんと再現されています。この部分は、ツーピース構造で トップリングを下からネジで止めています。


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左刻印は、実物とはぜんぜん違いますね。
右サイドのチャンバー下の番号は、固有の物で4個とも番号が違います。


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フレームの型取りが実銃と同じなのが大きな特徴です。複雑なPP のフレームをよく再現しています。 右側は、CMC のPPK で、PP の外側フレームを切り取った姿が良く判ります。 両方とも原形製作は六人部氏だそうです。


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マルゴーのフレーム割が正確なのは、実銃用チャーターアームズのグリップがぴったりはまる事で判ります。 残念ながら、ネジ穴が少し違うためそのまま装着は出来ません。


メカをみる

分解図 「人はパンのみに生きるにあらず」 のk'z さん から写真を使わせていただきました。有難うございます。クリック拡大可。


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このマルゴーPP は、シングルアクションなことがよく知られていますが、ハンマーを見ると ダブルアクションの用意は出来ています。製造段階でダブルアクションは、あきらめられたようですが、部品形状は そのまま造られたようです。自分で改良するのは容易なほうです。写真左上が改良されたものです。


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戦前モデルのシア形状をきちんと再現しているのは特筆ものです。
私は、以前から分解図を見ながらシアの固定軸はどうなっているのか不思議でしたが 一気に解決しました。長円になっているのでフレームを通すときには、狭くても通るんですね。


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ハンマーと同様に製造段階でハンマーリリースレバーが省かれています。 フレームには入れられるようにミゾがきっています。
また、トリガースプリングはコイル式の物ですが、最初は実物のような形状をしていたのではないかと思います。 トリガー形状は実物同様に造られていて、マルシンPPK/S のバネを入れることが出来ます。


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もっとも壊れやすいところが、このファイアリングブロックです。写真の物は強化パーツ に入れ替えられています。このころ六人部氏の設計したものは、すべてここが壊れます。 また、バレルも基部が壊れやすく、セフティも危ないです。 全体に壊れやすい感じです。


2016.11 追記・初期の分解図

初期分解図

↑クリック拡大できます。
匿名さまより初期の分解図をいただきました。珍しいものを有難うございました。 面白いですね、この分解図ではダブルアクション部品が組み込まれているうえ、パーツ価格まで 載っていますので間違いなく量産ぎりぎりまでダブルアクションだったことがうかがえます。


初期分解図

↑クリック拡大できます。
右の量産品と比較してみると分るようにダブルアクション関係が組み込まれています。
実銃では、強いトリガースプリングでトリガーバーの上へのテンションをまかなっているのですが モデルガンでは、別部品で小さな板バネをつけています。また、フレーム左側にはシアの戻り用に P-38 のようなスプリングをつけています。トリガーバーの方式は、のちのCMC PPK にも見られますが、グリップで しっかりと板バネを支えていないとバネが外れて作動不良を起こします。ここらあたりにダブルアクションをやめた理由が あるのではないでしょうか。

セフティ周りのパーツは、単なる書き漏らしではないかと思います。
右図の引用線が一点鎖線でないので、あとから別の人が書き加えたのかもしれません。「バネとネジを加えろ」という指示を 受けてとりあえず描いたのではないでしょうか?バネが実際は板バネなのですが図面ではコイルバネになっています。

貴重な資料有難うございました。


レストアのために

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マルゴーPP のグリップは割れやすいようです。マルシンの物も使用できます。 右側がマルシンのものです。マルゴーのグリップが平坦でぺちゃんこな事が判ります。


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マガジン左サイドには、7.65mmの刻印がありますが、左から3つ目写真のように 右サイド刻印の物もあります。一番右は、マルシンのサイド発火のマガジンを根性で薄くしてマルゴーに使用 しているものです。オーナーは、その後センターファイア式のマルシン・マガジンが何もせずに使えることを知って がっくりきたようです。


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マルシンのトリガーバーは、すこし加工すれば使用できます。幅の厚いものがマルゴーオリジナルです。 マルシンと違い、バネで上向きの力がかかっていませんので、下側に出っ張っているところが微妙にうまく作用して 、トリガーバーを上に誘います。

マルシンのシアは、幅が広くて使用する事はできません。
エジェクターは、すこしの加工で使用できます。


エピローグ

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珍しいものが4個も揃ったので我が家のワルサーたちと記念撮影。
なんだかエサに群がる鯉のようで気持ち悪いですね。


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CMC のPPK とともに。どちらも大戦中の実物グリップです。
両者シングルアクションですが、その事が示すようにワルサーの製品は 精緻のきわみで、お安いモデルガンには敷居が高いです。そのなかでもこの両者は、かなりワルサーの風を感じさせてくれます。

マルゴーのPP は、動きが悪くて壊れやすいため名銃の仲間入りをさせてもらえませんが、よく見ていくと 素晴らしい製品だったと思います。持っておられる方は、ぜひマルシンのPPK/S を参考にダブルアクションの組み込みに挑戦してみてはいかがでしょう。


でっかい写真 ↑k'z さん提供・拡大できます。


おまけ

分解図のJPG が別窓で開きます。→  分解図へリンク


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