写真x 写真00
マルシンの力作であるベビー南部です。米軍の付けた愛称で呼んだほうが解りがいいのですが、南部式小型拳銃が制式名でしょうか?
実銃は、1903年(明治36年)の登場ですので大変古いものを正確に再現しています。コルトポケットなんかと 同級生ですね。まだFN 1910やガバメントは世に生まれていません。
 
写真左が、当初アメリカン・コレクターズ・グループ のブランドで販売された桐箱入り高級モデルです。右がその後マルシンから販売されたダンボール入りです。
アメリカン・コレクターズ・グループ略してACGは、マルシンの販売用ブランドです。 同様なブランドのレプリカと同じ住所になっています。

写真01
どちらの製品も全く同じものです。シリアルも同じです。
のちにブローバック型も販売されました。
写真02
実銃では、仕上げが大変に素晴らしく、米国のコレクターには「 宝石が詰まっている 」と例えられます。
この時代、自動拳銃自体が世界的にも珍しい頃ですので、製品も相当に良い仕上げだったようです。
写真03
ACG発売当初より東京造兵廠の3つ丸刻印と東京ガス・エレクトリック刻印の2種類が販売されました。
東京造兵廠の方には、写真のように天皇陛下から頂いたという御賜の刻印が入ったものもあります。

登 場

写真20
Gun 誌の1990年の9月号に予告が登場しています。このように当初から2つの刻印が販売されています。
写真04
グランパ南部は、東京砲兵工廠のみで制作されましたが、パパ南部とベビーは、極少数が 東京瓦斯電気TGEで造られています。ベビーは5900丁が東京工廠、550丁がTGEです。
マルシンのTGE刻印は、実銃と同様に生産数が少ないようなので結構レアです。
 
TGE東京瓦斯電気工業は、いすず自動車、日野自動車、日立航空機の元となりました。
写真05
大抵の人は、格好の良い御賜刻印を購入しているので、実銃の世界ではレア中のレアの御賜刻印ですが、 モデルガンの世界ではありふれています。かえって御賜なしのほうが珍しいです。
実銃写真と比べていますが、フォントが少し違うようです。また、コッキングピースがモデルガンは 角張っていますね。
写真06
上記写真は、この本からのものです。日本軍の拳銃について網羅しているバイブルです。
ぜひ購入をおすすめします。だいたい送料込みで一万くらいです。
 
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大きさ比較

写真07
ベビー南部と言われているように、大変小さな拳銃です。右側は六研のプラ製無可動の南部式拳銃(パパ南部)です。
もともと8mm南部を使用する南部式拳銃をスケールダウンした7mm南部弾を使用するので、ストレートブローバックでも良かったでしょうが、8mmの南部式を忠実にスケールダウンしてショートリコイル式で制作されています。モデルガンもその機構を再現していますので、このモデルのおかげで 南部式の機構を勉強できます。
写真19
グランパ南部、ベビー南部、パパ南部、を経て14年式拳銃へ至ります。その基本機構は変わらず、 あまり丈夫でないロッキング機構はたいして変わりませんでした。
14年式では、本体がでっかくなったために撃針故障が増えたようです。
写真はハドソンのN−3 タイプです。
写真08
この写真は、海外の日本人コレクター様から頂いたものを2枚重ねています。
グランパ南部とベビー南部です。このようにトリガーガードは、同じ大きさであったろうと私は 想像しています。パパ南部よりもかなり小さいです。
ベビー南部も製造当初はグランパのようにマガジンボトムが木製であったようです。
 
海外コレクター様の写真コーナーは こちら へどうぞ。
写真09
マルシンのフロントサイトは別部品のようですが、叩いても動きませんでした。
貼り付けてあるのかもしれません。

出色の出来栄え
カートリッジ

写真10
左から8mm南部、7mm南部の実物ダミーカートで、右の二つがモデルガン用で、ACG、マルシンです。
ACGのカートは、素晴らしく本物そっくりです。マルシンのダンボールに入っていた物はACGと、ほんのすこし形が違います。

小道具・中田ホルスター

写真11
実際に存在したのか良く判りませんが、良く出来たベビー用の中田製ホルスターです。
書籍写真では、このハードシェル式は載っていません。ソフトなフタの物ばかりです。
ご覧のように日本軍のホルスターはフランスのリボルバーを参考に作られて、そのハードシェル式は 後年の14年式まで引き継がれました。

写真12
南部式までは、フタの内側に単発で弾を差し込むようになっています。この形式もフランスホルスターの真似でした。26年式のホルスターは実物です。

分解方法

写真13 ACG、マルシン製のどちらにも分解方法が書いてありませんでしたので記しておきます。
 
1)芋ネジを外し、マガジンキャッチを外す。
2)ショートリコイルさせながらトリガーガードを下方にずらす。


写真14 3)ボルトロックを右90度に回して外す。
4)バレル一式が前方に抜ける。


写真15 フレーム、バレル、ボルトの3重構造が良く判ります。こんな難しい加工をしていたなんて 大変だったろうと推測できます。14年式では3重を改善してフレームが削られました。

写真16
ハドソンの14年式と同じようにロッキングスプリング部分は、別パーツになっています。
トリガーガードを支える芋ネジもハドソンのピン止めと同様です。
 
ロッキングスプリング部分が別パーツなのは実銃のフレーム加工が、ややこしいことを物語っています。 また、トリガーガード脱落防止ネジも、本物にはありませんので、実銃の加工がかなり精緻であったことが読み取れます。

写真17
ロッキングブロックがモーゼルミリタリー式なことがよく判ります。
8mm南部を使用する南部式拳銃とまったく同じつくりです。

おわりに

写真18
世界的にまだ自動拳銃が珍しい時代に、東洋の田舎国の日本で独自の機構で開発されたことは特筆に価する出来事だと思います。また、無駄なショートリコイルを備えたこの銃は、まだどんな製品が受け入れられるのか まったく判らない時代の手探り状況を良く表していると思います。
 
この歴史的に大変貴重なベビー南部を完全に再現してくれたマルシンさんは素晴らしい会社だと思います。ただ、売り方には多少文句もありますが・・・。
 
ウエスタンアームズのブラックホークと並ぶ、金属モデルガンの最高品だと私は思います。

おまけ

分解図


実物分解図

分解図