写真00
このたびマボロシともいえるMGCコマンダーなどの鮮明な写真をご提供いただき 記事を書くことが出来ました。提供下さった匿名様、有難うございました。

外 観

写真01
全体の外観はヒューブレーのままですが、コマンダーは何と言ってもでっかいリングハンマーが特徴です。
また、左側面のマガジンキャッチはライブに変更されています。ですからマガジンにもキャッチの入る切り欠きが 存在しています。
 
カートは後述する広告とは違っていて前撃針のような形をしていますね。
この写真のコマンダーは、撃針が無いそうですので、いろんなモデルが有ったのかもしれません。

刻 印

写真02
ガッツリとコマンダーと刻印されています。 口径は38ですね。
反対側には、シリアル番号とMGCの刻印があります。

写真03
マガジン底部にも38口径の刻印があります。
現在では380ACPと呼びますが、これには38ACPと刻まれています。

登 場

写真04
1962年9月号(昭和37年)のガンファンの表紙裏広告です。
この号で初めての広告への登場ですので販売は6月くらいからでしょうか?
 
カートのおしりに輸入品であるコブラキャップを込めて発火するようです。
試作品なのか、まだマガジンキャッチはコルトスペシャルと同じく下から支える方式です。

写真05
翌月の1962年10月号(昭和37年)のガンファンの表紙裏広告です。
マガジンキャッチがボタン式のライブになっています。
こんなに昔からサイレンサーって言うのは欠かせない小道具だったのですね。
 
ですので団塊世代の先輩方は、たいていサイレンサーにうるさいです。

写真06
上の広告の1962年10月号(昭和37年)のガンファンの中の記事です。
クリックで拡大しますので読んでみて下さい。
 
それにはバレルが樹脂製だと書いてありますが、この辺は?です。 おそらく金属製と書くとまずいと思ったのでは無いでしょうか?
 
と、思っていましたらメールいただきました。
初期の製品は、バレルが樹脂製でマガジンキャッチも下にあったそうです。 写真いただき有難うございました。↓クリック拡大。
 
写真25

メ カ

写真07
メカ的には、コルトスペシャルから大いに進歩しています。
ブリーチを作成しシアも作られているのでしょう、ほぼ普通のガンの形態をなしています。
写真のようにモナカ割りのフレームがバレルを挟み込んでいます。 ヒューブレーがもともとこのような構造をしていたために、改造もやりやすかった物と思われます。 本家のヒューブレーがバレル取り付けをやめたのに対し、MGCが取付けてやがてワルサーVP2までに 発展させたのは面白い結果です。アメリカでは、あまりリアルに過ぎるとオモチャとして見てくれませんから 危険です。
写真08
ブリーチを外からネジで止めるという乱暴さ以外は、すでにモデルガンの要素が完成しています。
あとは、スライドとフレームのミゾ結合をちゃんとすれば、立派なモデルガンです。
これを作っていてワルサーVP2の構造が生まれたのでしょう。

写真09
なかなかに立派なスタイルです。
MGCコマンダーは、発売後数ヶ月で警察の指導により発売禁止にされたようです。 考えられるのは、後撃針のシステムでしかも輸入品のコブラキャップは、 かなり強力だったらしいのでその辺も影響したのかもしれません。
雑誌の記事によるとインサートは入っているようですが、定かではありません。
 
コブラキャップも後に販売禁止になったようです。
写真27 いただき写真のチラシです。なかなかに格好良いですね。

仲間たち

写真12
MGC創世記には、コルトスペシャルを皮切りに数種類似たようなモデルが存在しています。
このたびベレッタの写真もいただきましたので判る限りで説明したいと思います。
 
発売順に行くと以下のようになります。
  1. コルトスペシャル (逆BLK式)
  2. ワルサーP−38 (逆BLK式)
  3. コマンダー (撃発式)
  4. ガバメント ??
  5. ベレッタ (撃発式)

写真10
写真11
上のイラストは1964年7月のGun誌のMGC広告からですが、P−38が載っていませんね。あんまり格好が良くないので 欠番にされてしまっているのでしょうか?
 
このうちガバメントという物がどういう製品だったかよく判りません。
情報がありましたら是非教えて下さい。
 
それにしてもコルトスペシャルからワルサーVP2 まで、一年足らずで数々のモデルをアップしています。 小林さんもMGCもノリノリ状態だったのでしょう。

P−38

写真123
ガンファンの国際ガンクラブの広告です。
操作の説明やトリガー形状を見ますとこのP−38がコルトスペシャルの兄弟モデルであることが判ります。
 
それにしても高い価格です。オリジナルのヒューブレーが 1,000円なのにコルトスペシャルは 3,000円、 P-38 は 4,000円もします。高級モデルでした。
写真13 ↑マウスクリックで拡大します
 
1962年9月号(昭和37年)のガンファンの記事です。
ヒューブレーと日本製デッドコピーのヒューブレーのこととMGCコルトスペシャル、P−38の 事が書かれています。すでにモデルガンという言葉が自然に使われています。
 
自論ですが、このことからも日本初のモデルガンの栄誉はMGCコルトスペシャルに持たせてほしいものです。 ホンリューなんかじゃいやです。
写真14
P−38のいただいた写真をここに掲載していますが、これは数年前にどなたかから頂いた物ですが マシンが吹っ飛んだせいでお名前も何も判らなくなってしまいました。よって掲載許可も判らなくなってしまいました。 ご都合が悪かったらご連絡下さい。

写真15
スライド上のセフティが泣かせます。トリガー形状も大幅に変更されています。 分解ラッチも増設されていて、マガジンキャッチも 下面に取付けられています。精一杯P−38に似せようとした努力が見られます。
 
電動工具が氾濫している現在では、高校生でももっとマシなカスタムを作るぞ・・ってな感じですが、 50年前ですよ、モデルガンという物がこの世に存在していないときに出現したモデルたちです。 形がすこし変でも驚異の名品として当時の子供たち(大人?)の目に焼き付いたことでしょう。
写真26
匿名様から写真をいただき掲載しています。
ワルサーP38のチラシです。掲載許可有難うございました。

ベレッタ

写真16
コマンダーのあとに発売されたと思われるベレッタです。これまた極めて珍しい物ですが鮮明な 写真を頂きました。有難うございます。
 
グリップのPBのメダリオンが良いですね。全体は、かなりスマートな感じに仕上がっています。
マガジンキャッチは、のちのMGCベレッタポケットのあたりに作られています。
小林さんは、このデザインのボタン式キャッチが好きだったのでしょうね。
写真17
前出のP−38のようにあちこちいじってヒューブレーをベレッタ34に改造しています。
マガジンも指掛けが作られていかにもベレッタです。
もともと左右にあったフレーム上のヒューブレーの凸刻印は削られてすっきりな側面になっています。
写真18
スライドの背中は、大きく削られてベレッタに生まれ変わっています。
ハンマーはコマンダーと同じものでは無いでしょうか?

写真19
ちゃんとベレッタの刻印が刻まれています。しかもメイド・イン・イタリーまで書かれています。

ガバメント?

写真20
このモデルガンがガバメントなのかよく判らないのですが、ハンマー形状はヒューブレー式の コルトスペシャルから変更されています。トリガー形状からすると動作は逆ブローバック式です。
 
ハンマーが起こせるようになっているのでしょうか?コルトスペシャルではブラブラでした。
写真28 匿名様から当時の写真をいただきました、有難うございます。広告用でしょうね。ちゃんとガバメントが存在したことが証明されました。 ガバのスライド刻印の口径は38となっていますね。

S&Wオート44

写真20
初めて見ました、こんなモデルがあったんですね。驚きです。あまりに珍しいので別のページで紹介しています。 こちらです。http://yonyon.lolipop.jp/collection/auto/sw44_com/

参考資料

写真24
広告や記事を引用したのは、この2冊です。
こののちすぐにガンファンは廃刊になり、代わって国際ガンクラブが国際出版を作ってGun誌が登場します。
拳銃ファンから改名したガンファンが、子供向けの記事が多かったせいで廃刊になってしまったのか、はたまた広告の収入源の問題なのか解りませんが、それを反面教師にして 国際出版のGun誌は、もっぱら大人向けの狩猟雑誌としてスタートしています。

おわりに

匿名様からは、使わせていただいた他にも多くの写真を頂きました。貴重な物を有難うございました。 おかげさまで、ほぼ幻ともいえるコマンダー、ベレッタについて記録を残すことが出来ました。 重ねて御礼を申し上げます。
 
1960年頃20代半ばだった小林青年は、夜中までヒューブレーにヤスリを当ててゴシゴシと削っていたに違いありません。 それから半世紀たった今でもこのモデルガン界の苦境の中、精一杯に新製品であるGM−7や新型カートリッジを 発明し続けています。すごいエネルギーですね。
小林さんは、まさに日本のモデルガン界そのものです。 いえ、エアーソフトの先祖をたどれば、プラ製、金属モデルガンからヒューブレーに行き着くのですから、現在世界に広がる トイガンの生みの親のような存在です。また、特筆すべきはすべてオリジナリティあふれるモデルだということです。 他社の模倣が当たり前のトイガン界において確固としたオリジナルモデルの道を歩んだのは小林さんとMGCだけです。 その熱き血は今でもGM−7に受け継がれています。
 
いつまでも尽きることの無いエネルギーでこの先も新製品を生み出していってほしいです。
写真21
写真22 ↑GM7写真はハイキャパさんのブログ、トイボックス〔TOY BOX〕よりお借りしました。

2022年資料追記
発禁に至る経緯

頂いた資料を公開。大変貴重なものです。有難うございました。

写真29
コマンダー発売予告
写真30
コマンダー宣伝

写真31 新聞騒動#1 写真32 新聞騒動#2

写真33 コマンダー発禁 写真34

コマンダー中止とVP お知らせ