ハドソンのグリースガンといえば、プラスチック製ブローバックを 連想する人が多いと思いますが、その昔は鉄製のモデルガンを 作っていました。また、プラ製ガスガンもあったようですが性能が悪かったそうです。 ハドソンがモデルガン化したものは、チャージングハンドルのないM3A1型です。 写真は、取説・分解図の表紙ですが、よく見ると左右が反転していますね。
外 観
ご覧のように磁石が引っ付く鉄製です。しかし、カッチーンと張り付くわけではないので
なんだか鉄分が薄いような材質です。
バレルバンドは亜鉛製です。壊れそうです。
バレルも亜鉛製です。すでに死んでいます。ヒビが無数に入っており
うかつに衝撃を与えようものなら崩れ去る危険が大です。あぶねー。
ボルトも亜鉛の地肌のままで、すでに膨張して動かなくなっています。
「お前はもう死んでいる」状態です。
今回は、遠くから眺めるだけですね。借り物なのでうかつに触れません。
刻 印
このSMG記号は、サブマシンガンという意味です。まだ52年規制は
発行されていない頃の製品です。
細 部
リアサイトはスポット溶接です。
グリップのプレスは、一見菱型のようですがようく見ると丸い凸で打たれています。
左右をモナカ状に貼りあわせての溶接でしょうか?
実物もこのような感じだったのでしょう。戦時下に安く大量に作れるように
設計されたものです。
この辺りのスポット溶接は、非常に浅いですね。
マガジンにも大量生産向きな工夫が見て取れます。2個のパーツを
スポット溶接しています。
この部分は、オリジナルでしょうか?分解図とは形状が違います。
こんどオーナー様に聞いてみることにします。
バレル周り
デトネータです。綺麗ですね、ちゃんとブローバックしたのでしょうか?
受け側のパーツは、一部亜鉛崩壊しています。
ハドソンの南部にもよく見られますが、亜鉛の質が悪いですね。
膨張してしまい、ヒビを生じてやがて崩壊してしまいます。
ボルトの2枚舌のようなエキストラクターが覗けます。
動かせないのが残念です。
実物とは、形状が違いますが機能的には良くコピーされています。
実 銃
インターネットから実物のボルト写真を取ってきました。
すごく面白い構造をしています。
ふつうオートマチック銃というのは、フレーム内のミゾに沿ってボルトが
動くものですが、M3サブマシンガンは外のハウジングは只の円周で
ボルトの動きの基準はガイドロッドによっています。戦時下に大量に
安く、早く作らなければならなかったための工夫がよく現れています。
こちらは、実物の分解図です。非常に単純に作られていてます。
どことなくステン・マシンガンにもよく似ています。
登 場
次期登場の広告は73年(昭和48年)10月号に出ていました。
写真が間に合わなかったのか、チャージングハンドルのあるM3型の写真が使われています。
このころは、46年規制でハンドガンが銃口閉鎖、黄色塗りになったことから、売れ行き減が
予想され、各社は長物に活路を見出そうとしていた頃です。
しかし、現実にはハンドガンは黄色でも受け入れられ、このあと52年規制までの
4年間にモデルガン全盛期を迎えることになります。
74年新年号に登場広告が掲載されました。
当初は16000円だったようですが、このあとすぐに18000円へ
値上げされます。
おわりに
オーナー様、このたびは、レアなモデルを貸して頂き有難うございました。
亜鉛崩壊で残念な状態ですが、珍しい銃を触らせてもらいました。
私達が子供の頃は、第2次大戦中の銃がモデルガン化されていました。
その中でもちょっとマイナー気味のグリースガンを製品化するなんて
さすがにハドソンさんです。亜鉛の質が悪いのもハドソンらしいです。
あまり見ることがないモデルですので大切に保管していただきたいです。
今回は貴重な製品をお借りして「黄金のモデルガン繁盛期」の時代へ
旅をさせていただきました。オーナー様有難うございました。
分解図
ハドソンのものは、実銃と違ってリコイルガイドロッドを本体外部から通しています。