写真x 写真は、タナカ 九九式長小銃です。

私は九九式短小銃しか知らなかったのですが、調べてみたら日本陸軍で長いものと短いものが同時に正式になったようですね。 長いほうが九九式小銃で短いのが九九式短小銃と名付けられていて、長小銃というのは間違わないように明示的に言っているだけのようです。


取扱書

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日本出版配給株式会社の取扱書を入手しました。小さな冊子ですが、当時は 53銭で売られていたもののようです。 昭和16年に東条英機陸軍大臣が認可して19年に印刷されたものです。

明確に九九式小銃と短小銃と書いてあります。

写真04


九九式長・短銃の比較

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中田の九九式短銃とタナカの長銃です。どちらも作っているのはタナカさんです。

日本陸軍の正式小銃は、村田式のあとは30年式小銃と同騎兵銃(正式には騎銃)であり、次が38式歩兵銃と 同騎兵銃と、長銃・騎兵銃というコンビで正式化されてきたものですが、この九九式では口径が6.5mmから7.7mmと 強力になり、いままでの騎兵銃では、まともに撃てなくなりました(想像)。そこで歩兵銃と騎兵銃の中間の長さであり、世界の潮流である 600mmバレル、全長1mほどの九九式短銃に騎兵銃の分野も担わせようと作られたものでしょう。その証拠にスリングの付け方が 銃の左サイドであり、騎兵銃と同じ付け方になっています。


写真06

後ろの方は、スリングの取り付け方以外は全く同じ作りです。でもよく見ると中田の短銃の方のリアサイトは、ネジが一つ省略されていますね。 タナカの短銃はネジがありましたので、中田の特徴かもしれません。


写真07

スリングの付け方が下方向と左サイドになっています。ドイツのモーゼル小銃で言えば、Gew とKar の違いです。


写真08

トリガーガードのかたちがタナカの長小銃では、製作ミスでしょうか?残念な形状になっています。シンメトリーではないです。一番下の写真は長小銃の実物写真です。 下のサイトから取ってきました。


長小銃実物写真

実物写真


比較の続き

写真09

先端のフロントバンドは、ぜんぜん違うものです。短銃の方は、ハンドガードをくわえ込むようにできています。

ちなみにどちらのモデルガンも本物&レプリカの銃剣が装着できません。
わざとなのかも?? 少し加工する必要があります。


着 剣

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写真の上がウインドラスのレプリカ銃剣で、下が本物ですが、両方ともロック位置まで装着できません。 どちらも長小銃の方に着剣しています。


三八式と比較

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三八式が採用されたのは 1905年、九九式は 1939年なので34年たっていますが、そんなに大きくは変わっていません。
九九式では、随分とストックがスリムになっていますが、実物でもそうだったのでしょうか?写真の三八式はタナカのモデルがんです。


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バットプレートは、Kar98 の後期型のようにカップ式になっています。またクリーニングロッド止めは変更になっています。 どちらのモデルガンも形だけコピーしています。ロッドを止める実物の機能はありません。


写真12

三八式では、ボルトでストックを貫通させることはなかったのですが、九九式では変更されています。


写真13

三八では2400メートルもあったリアサイトは、1500メートルと短くなり、実践的になりました。 それでも長いですね、突撃銃が600mから700mあたりを射程に考えられているそうなので まだひと世代前的な感覚です。


写真14

ロアータングが延長されて、より強度が強くなっています。これについては以下に少し考察してみます。


日本小銃のロアタングの変遷

各図は、下記に紹介している国立国会図書館のページから取ってきた物です。

30年式図1

三八式よりも前に正式化された三十年式歩兵銃の初期の断面図には、ロアタングはありません。 右下の方に用心鉄と書かれたトリガーガードがあるのみです。


30年式図2

ところが、すぐに改修されたようで断面図にはアッパータングとロアタングが描かれています。 用心鉄右側に上、下支鉄 と描かれています。部品の重なり合いは、トリガーガードの下にロアタングが来るようになっています。


38式図

三八式では改善されてロアタングのほうがトリガーガードの上になりました。


44式図

三八式騎兵銃からの改良型である四四式も同じ構造です。


99式図

九九式では、更に延長されてしかもトリガーガードと一体式になりました。


99式図

この絵は、一体パーツで描かれていないので正確ではないのですが、概念はこんな感じです。


モーゼル図

世界的におそらく最も作られたであろうモーゼルアクションの断面図です。 ロアタングは伸びていませんね。日本の三十年式小銃の最初の絵と変わりません。 アメリカの1903ライフルでもガランドでもタングは短いです。

これから言えることは、やはりストックのアリミゾ結合は強度が足りないのではないかということです。 ルバング島で発見された小野田さんの銃は、ストックが壊れてはいなかったから、通常使用では 大丈夫だったのでしょう。しかしタングの伸びから言うと何かしら不都合もあったのでしょう。

私は、いままで日本軍の小銃のストック結合は部材節約の良い部分ばかりしか考えていませんでしたが、 それなりにリスクもあったんだろうとやや考えが変わってきました。


Gun誌 短銃広告

写真00

1991年11月号のGun誌 に広告が載っています。

1983年に99式短小銃を発売した中田商店は、その後モデルガンの製造、販売をやめます。 そのため99式短小銃を製造していたタナカが、引き続き製造販売を行ったようです。 ナカタ製品との違いは、刻印のみと思います。

中田製品は、下の写真のように中田の漢字をイメージした刻印が有り、タナカ製品は、タナカワークスを示すtwの刻印があります。  


中田マーク

写真02

中田マークのある九九式モデルガンと中田商店のホームページに有る中田マークです。
ちなみに昔は四角形ではなくって円でした。右下に乗せています。


タナカWEB 広告

写真01

現在のタナカのホームページに載っている広告です。

発売時期は分かりませんが、こちらのブログの2010年12月の記事に発売のことが書いてあります。
http://nodaya2011.blog22.fc2.com/blog-entry-4.html?sp

また、ガンズダイジェスト2011 に新製品としてエアガンの長小銃が載っていますので、2010年後半に モデルガンも登場したのでしょう。


紙 箱

箱写真

ネットから取ってきました紙箱写真です。間違わないように長小銃と明示的に書かれています。 他にも「 九九式小銃 」と書かれた箱に入った長銃も見たことがあります。


参考ページ

国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/

国会図書館

ここで旧陸軍の銃器取扱書が見られます。検索窓に四四式騎銃 とか三八式歩兵銃 とか入れてみてください。 いろいろなものが出てきます。PDF でダウンロードも出来るようになっています。


三八セットと比較

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三八セットと九九セットの大きさ比較です。


モーゼルセットと比較

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モーゼルセットと九九式セットの大きさ比較。Gew とKar のスリング取り付け違いが、そのまま九九セットにも 当てはまっています。


おまけ・銃剣図

写真18

購入した九九式取扱本に銃剣の絵も載っていました。三十年式銃剣の後期型です。 私は、日本軍の銃剣には刃が付けられていないものとばかり思っていましたが、この絵を見ると 先端の方190mmには刃が付けられていたようです。