現在の名銃と呼ばれるM-16 は、もともとAR-10 という7.62mm 口径の銃が先祖でした。 そのAR-10 を試作品から見ていくと、ストーナーさんの設計思想を形として見ることができます。

上の写真は、アメリカのGun 雑誌に掲載されたときのショットらしいのですが、後ろの壁に掲げられた AR-10 への試作銃に興味がわきます。以下の4つたちです。便宜上#01から#04まで 番号で呼んでみたいと思います。


#01

試作の一番手は、30−06弾を使用するもので、マガジンはBAR の物です。 直銃床のコンセプトを完全に具体化したものですね。銃床が銃身延長上に来るために サイトが上がらざるを得ずドイツの MP44のようなサイトを持っています。

強烈な反動を抑えるには、完全なる直銃床を用いるしかない、という発想でしょう。
バレル延長上にボルトと、リコイルスプリングを置くという形は、M-16 に至る最後まで貫かれました。

BAR (ブローニング・オートマチック・ライフル)は、こちら↓。


#02

2番手は、すでに銃床の形にAR-10 からM-16 に至る特徴ある三角形を見ることができます。 サイトは、光学系に変更されているようです。簡易スコープになっていると思います。 また、ついでに取っ手にしてしまえという、将来まで続くことになる形状が見られます。


#03

かなりAR-10 ぽくなってきました。光学サイトは没になり、オープンサイトに変更になっています。


#04

ハンドガードが大きくなり、AR-10 の完成です。マガジンは補強リブの形状からワッフル型と呼ばれます。 この銃のガスパイプは、まだ左側にあり、銃身上を通ってはいません。

ちなみにワッフルって知っていますよね、こちらです。

おいしいです。


ワッフルマガジン

↑の写真を見るとワッフル型マガジンは、7.62mm NATO 弾では、当初から用いられている事が分かります。



#03詳細写真

写真を見るとアッパーとレシーバーは、モーゼル拳銃のような溝で結合されているように見えます。 コッキング・ハンドルは右側、ガスパイプは左側にあります。マガジンキャッチは、BAR のように トリガーガード前方でしょうか?


#04詳細写真

試作4号機でテイクダウンできるようになり、ダストカバーが付き、ボルトは断面が丸くなり ほぼスタイルは出来上がりました。


↑この2枚の写真でガスパイプがバレルの左側に設置されていることが良く分かります。


最後の写真は、軍用トライアルに出したアルミバレルが破裂した状況でしょう。 ストーナーさんは、アルミバレルの提出に反対したそうですが、アーマライト社長の サリバンさんは、やけくそなのか、わざと負けるようになのか、アルミバレルでトライアルに臨み 想像できる結末を迎えています。


AR-10B 試作機

こちらは、プロト AR-10B という試作機だそうです。

右写真のようにネットでの情報によると、このページで#03と呼んでいるものが プロト AR-10A だそうで、#01が X 01、#02が X 02 だそうです。


ストーナーさんカラー写真

当ページ一番上の写真と同じ状況ではないかと思うのですが、銃の並べ方が 上下が逆になっていて上から新しい順になっています。また、棚の右側に並んでいるものは、AR-5 たちのようです。

オランダでの量産品

試作は出来たものの、買い手のない銃を抱えて、なんとか投資に対する結果を出したい親会社のフェアチャイルド社は、製造権を オランダのAI 社へ期間限定で売ります。

量産品は横給弾に備えてガスパイプがバレル上、銃の中心線を通るように 変更されました。これでボルトは見慣れた形状になりました。ジム・サリバンさんの 設計のようです。

マガジンハウジングにマニュファクチャド・バイ・AI社 ネデルランド の刻印が見られます。


また、右写真のように3パターンのモデルが製造されましたが、 5000から1万丁くらいの生産にとどまったようです。

その後、これは商売にならないとあきらめたフェアチャイルド社は、AR-10 とAR-15 の権利を コルトに売ります。

そうして 7.62mm のAR-10 の運命は終わりを遂げ、5.56mm のAR-15 の新たな運命が始まっていくのでした。